カスハラ(カスタマーハラスメント)対応の流れ
カスタマーハラスメントへの対応で大切なのは、現場の従業員が一人で判断し、一人で抱え込まないことです。このページでは、厚生労働省の指針が対処の内容の例として挙げていることをもとに、現場での対応から事後のケアまでの一般的な流れを説明します。実際の手順は、各事業者が自社の実態に合わせて定めるものです。
まず、安全を確保する
暴行、傷害、脅迫など、身の危険を感じる言動があったときは、報告を待たずにその場を離れ、自分とまわりの人の安全を確保してください。必要なときは、直ちに警察に通報してください(110番)。社内への報告は、安全を確保した後で行います。
指針は、暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については、警察へ通報することを対処の内容の例として挙げています。
一人で抱えない
対応が難しいと感じたら、一人で対応を続けず、まわりの従業員に声をかけて、可能な限り複数名で対応します。指針は、可能な限り労働者を一人で対応させないこと、必要に応じて管理監督者等が代わって対応することを、対処の内容の例として挙げています。
その場で約束できないこと(金銭の支払いや特別な対応など)は約束せず、責任者の判断を仰ぎます。
まず話を聴く
最初に、何についてのご意見・ご要望なのかを伺って確認します。顧客等からの苦情のすべてがカスタマーハラスメントに当たるわけではなく、社会通念上許容される範囲で行われたものは正当な申入れです。正当なご意見は、真摯に受け止めて対応します。
こちらの対応に問題があった場合は、お詫びし、できることを説明します。指針は、事業主や労働者の側の不適切な対応が言動の原因や背景になっている場合もあることに留意する必要があるとしています。
できること・できないことを伝える(線引き)
お応えできないご要望には、理由を説明したうえでお断りします。要求の内容は妥当でも、暴言や威圧、長時間にわたる言動など伝え方が相当でない場合は、要求には対応しつつ、伝え方については「このままではお話を続けることが難しい」旨をお伝えします。
声のかけ方は、受け止め・線引き・予告・打ち切りの4段階で考えると、対応する人によるばらつきを減らせます。どの段階まで進んだか、予告をいつ伝えたかを記録しておくと、後の報告や事実確認に役立ちます。
報告・エスカレーション
対応が難しいと感じたら、あらかじめ決めた報告先(店長・施設長などの責任者)に報告し、その場の対応について指示を受けます。報告は、対応の最中でもかまいません。できるだけ早く報告してください。指針は、労働者から管理監督者等に直ちに報告し、その場の対応の方針について指示を仰ぐことを、対処の内容の例として挙げています。
現場での対応が難しい場合は、本社・本部などに情報を共有し、指示を仰ぎます。法的な手続が必要と考えられる場合は、法務部門等と連携し、弁護士に相談します。現場の従業員が、相手に対して法的な手続について述べることは避けてください。
カスタマーハラスメントに該当するかどうかを、現場の従業員が判断する必要はありません。迷ったときは報告する、を基本にしてください。
記録を残す
対応が終わったら、記憶が新しいうちに、日時と場所(電話・メール等の場合はその手段)、対応した人と同席した人、ご意見・ご要望と言動の内容、こちらの説明と対応の経過、予告や打ち切りを伝えた時刻、報告した相手と受けた指示を記録します。
録音・録画は、指針が対処の内容の例として挙げているものですが、個人情報の保護に関する法律等を遵守し、顧客等の個人情報を適切に取り扱うことが求められます。実際に録音・録画を行っていない場合は、行っていると相手に伝えないでください。
記録は、後から事実関係を確認し、再発防止に生かすためのものです。記録には個人情報が含まれるため、必要なことだけを書き、社内で定めた方法で管理します。
対応の打ち切り
指針は、労働者から十分な説明を行った上で、なお繰り返しの要求が続く場合には、一定の時間の経過をもって退店を求めたり、電話を切ったりすることを、対処の内容の例として挙げています。指針に具体的な時間の定めはなく、目安の時間は各事業者が実態に合わせて定めるものです。
打ち切りは、時間だけで機械的に行うのではなく、十分に説明したうえで、責任者の判断で進めます。これ以上はお受けできない旨と理由をお伝えし、このまま続く場合は対応を終了させていただくことを予告し、なお続く場合に対応を終了する、という順に進めると、経過を記録に残しやすくなります。
介護や医療のように、サービスが途絶すると生命や心身の健康に重大な影響が及ぶおそれがある業種や、各業法等でサービス提供の義務等が定められている場合は、その場でお引き取りをお願いする形ではなく、必要なケア・診療を継続したうえで、担当者の変更、別室でのご案内、複数名での対応などを検討します。指針も、こうした場合に留意して適切に対応する必要があるとしています。
特に悪質と考えられる場合の対処は、あらかじめ決めておく
指針は、労働者に対し過度な要求を繰り返すなど特に悪質と考えられるものへの対処の方針をあらかじめ定め、労働者に周知し、その対処を行える体制を整備することを、事業主の措置として求めています。対処の例として、警察への通報、警告文の発出、法令の制限内で商品の販売やサービスの提供等をしないこと、店舗及び施設等への出入りの禁止、民事保全法に基づく仮処分命令の申立てが挙げられています。
どの対処を行うかは、現場の従業員ではなく、あらかじめ決めた責任者が、記録に基づいて判断します。対処を行う際は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律に基づく合理的配慮の提供や、各業法等によるサービス提供の義務等に留意し、必要に応じて専門家に確認してください。
事後の相談窓口
対応の後も、気持ちの落ち込みや不安が続くことがあります。指針は、相談窓口をあらかじめ定めて労働者に周知することを事業主の措置としており、カスタマーハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応するよう求めています。
相談窓口は、職場の他のハラスメントの相談窓口と一体的に設けることも考えられるとされています。相談者のプライバシーを保護すること、相談したことなどを理由として解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定めて周知することも、事業主の措置に含まれます。
従業員へのケアと再発防止
相談や報告があったときは、事実関係を迅速かつ正確に確認します。事実が確認できた場合は、速やかに、被害を受けた従業員への配慮の措置を行います。指針は例として、管理監督者等が代わって対応すること、被害を受けた従業員と行為をした人とを引き離すこと、対応する担当者の変更や複数名での対応、配置転換、管理監督者や産業保健スタッフ等によるメンタルヘルス不調への相談対応を挙げています。
再発防止として、方針と対処の内容を改めて周知し、言動の原因や背景に商品・サービス・接客等の問題や顧客等とのコミュニケーションの不足があった場合は、その問題そのものの改善を図ります。指針は、カスタマーハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合も、同様に再発防止の措置を講ずることとしています。
正当な申入れとして受けたご意見・苦情も記録し、商品・サービス・接客の改善に生かします。対策が、ご意見・苦情への丁寧な対応の妨げにならないようにしてください。
小売業の対応マニュアル
売場やレジで従業員を一人にしない配置、店舗責任者が交代して対応する手順、ご退店をお願いするまでの流れをまとめます。
飲食業の対応マニュアル
酒類を提供する時間帯の対応、他のお客様の安全の確保、ホールと厨房で応援を呼ぶ合図を含めてまとめます。
介護事業所の対応マニュアル
必要なケアを継続することを前提に、担当者の変更・複数名での対応・面談の設定による対応の流れと、認知症などの症状に起因する言動への向き合い方をまとめます。
病院・診療所の対応マニュアル
急を要する患者様への対応を優先したうえで、別室でのご案内、複数名での対応、警備担当への連絡の流れをまとめます。
電話窓口の対応マニュアル
受け止め・線引き・予告・通話の終了の4段階と、通話中に責任者へ代わる手順、終話後の記録の様式をまとめます。
よくある質問
- カスハラかどうか、現場で判断する必要はありますか。
- 現場の従業員が一人で判断する必要はありません。個別の言動が該当するかどうかは、目的や経緯、態様、頻度などを総合的に考慮して判断されるものです。迷ったときは、あらかじめ決めた報告先に報告し、指示を受けてください。
- 対応を打ち切る時間の目安はありますか。
- 指針は、十分な説明を行った上でなお繰り返しの要求が続く場合に、一定の時間の経過をもって退店を求めたり電話を切ったりすることを対処の例として挙げていますが、具体的な時間は定めていません。目安の時間は、各事業者が自社の実態に合わせて定め、従業員に周知しておくものです。
- 警察に通報するのはどのようなときですか。
- 指針は、暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については、警察へ通報することを対処の例として挙げています。身の危険を感じたときは、報告を待たずにその場を離れて安全を確保し、必要なときは直ちに110番に通報してください。
- やり取りを録音してもよいですか。
- 指針は、顧客等とのやり取りを録音・録画することを対処の例として挙げ、その際は個人情報の保護に関する法律等を遵守し、顧客等の個人情報を適切に取り扱うことを求めています。録音・録画の目的、保存期間、取扱いを社内で決めたうえで運用してください。実際に行っていない場合は、行っていると伝えないでください。
- 正当なクレームへの対応が萎縮しないか心配です。
- 指針は、社会通念上許容される範囲で行われたものは正当な申入れであり、カスタマーハラスメントには当たらないとしています。正当なご意見・苦情は、真摯に受け止め、記録して改善に生かすことを、対応の手順に併せて書いておくことをおすすめします。