カスハラ(カスタマーハラスメント)とは
カスハラは、カスタマーハラスメントの略です。厚生労働省の指針は、顧客等の言動のうち、社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものを「職場におけるカスタマーハラスメント」としています。このページでは、指針の定義と、指針が挙げる典型的な例、正当なクレームとの区別の考え方を説明します。
カスハラの定義:指針が示す3つの要素
指針は、職場において行われる①顧客等の言動であって、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの、という3つの要素をすべて満たすものを、職場におけるカスタマーハラスメントとしています。どれか1つだけでは足りず、3つがそろっているかどうかで考えます。
この指針は、労働施策総合推進法の規定に基づいて厚生労働省が定めたもので、正式な名称は「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)です。
要素①「顧客等」に含まれる人
指針にいう「顧客等」は、顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の、事業主の行う事業に関係を有する者を指します。今後商品を購入したりサービスを利用したりする可能性がある潜在的な顧客や、今後取引する可能性がある相手、今後施設を利用する可能性がある人も含まれるとされています。
指針は例として、事業主が販売する商品の購入やサービスの利用をする人、事業に関する内容等について問い合わせをする人、取引先の担当者、企業間での契約締結に向けた交渉を行う際の担当者、施設・サービスの利用者とその家族、施設の近隣住民を挙げています。
また「職場」は、労働者が業務を遂行する場所を指し、通常就業している場所以外であっても、取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店、顧客の自宅などで業務を遂行していれば含まれるとされています。
要素②「社会通念上許容される範囲を超えた」言動:内容と手段・態様の2つの観点
指針は、社会通念上許容される範囲を超えた言動とは、言動の内容が契約内容からして相当性を欠くもの、または手段や態様が相当でないものを指すとしています。つまり「言動の内容」と「手段や態様」の2つの観点から考え、どちらか一方だけが範囲を超える場合でも該当し得るとされています。
判断に当たっては、言動の目的、言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者とされる人との関係性など、さまざまな要素を総合的に考慮することが適当とされています。また、事業主や労働者の側の不適切な対応が、言動の原因や背景になっている場合もあることに留意する必要があるとされています。
要素③「就業環境が害される」とは
指針は、言動により労働者が身体的または精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指すとしています。
判断の基準は「平均的な労働者の感じ方」、つまり同じ状況で同じ言動を受けた場合に、社会一般の労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるかどうかとすることが適当とされています。言動の頻度や継続性は考慮されますが、強い身体的または精神的苦痛を与える態様の言動の場合は、1回でも就業環境を害する場合があり得るとされています。
カスハラの例①:言動の内容が範囲を超えるもの(指針に挙がる典型的な例)
報道などで紹介される個別の事例ではなく、指針が「典型的な例」として挙げているものを紹介します。指針は、これらは限定列挙ではなく、個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ることに十分留意するよう求めています。
そもそも要求に理由がない、または商品・サービス等と全く関係のない要求:性的な要求や、労働者のプライバシーに関わる要求をすること。
契約等により想定しているサービスを著しく超える要求:契約内容を著しく超えたサービスの提供を要求すること。
対応が著しく困難な、または対応が不可能な要求:契約金額の著しい減額の要求をすること。
不当な損害賠償要求:商品やサービス等の内容と無関係である不当な損害賠償要求をすること。
カスハラの例②:手段や態様が範囲を超えるもの(指針に挙がる典型的な例)
身体的な攻撃(暴行、傷害等):殴る、蹴る、叩くなどの暴行を行うこと。物を投げつけること。わざとぶつかること。つばを吐きかけること。
精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等):店舗の物を壊すことをほのめかす発言や、SNS等のインターネット上へ悪評を投稿することをほのめかす発言によって労働者を脅すこと。SNS等のインターネット上へ労働者のプライバシーに係る情報の投稿等をすること。労働者の人格を否定するような言動を行うこと(相手の性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的な言動を含む)。土下座を強要すること。盗撮や無断での撮影をすること。労働者の性的指向・ジェンダーアイデンティティ等の機微な個人情報を、本人の了解を得ずに他の人に暴露すること、または開示を強要したり禁止したりすること。
威圧的な言動:大きな声をあげて労働者や周囲を威圧すること。反社会的な言動を行うこと。
継続的、執拗な言動:同様の質問を執拗に繰り返すこと。当初の話からのすり替え、揚げ足取り、執拗な責め立てをすること。同様の電子メール等を執拗に繰り返し送りつけること。
拘束的な言動(不退去、居座り、監禁):長時間に渡る居座りや、電話で労働者を拘束すること。
指針は、カスタマーハラスメントには、店舗や施設で対面で行われるものだけでなく、電話やSNS等のインターネット上で行われるものも含まれるとしています。
正当なクレームとの違い
指針は、顧客等からの苦情のすべてがカスタマーハラスメントに該当するわけではなく、客観的にみて社会通念上許容される範囲で行われたものは、いわば正当な申入れであり、カスタマーハラスメントには当たらないとしています。商品やサービスへのご指摘は、業務を改善するための大切な声です。正当な申入れは、真摯に受け止めて対応することが前提です。
区別は、相手が怒っているかどうかではなく、「要求の内容が妥当かどうか」と「伝え方(手段・態様)が相当かどうか」の2つの軸で考えます。
要求の内容が妥当で、伝え方も相当な場合は、正当な申入れ(いわゆる正当なクレーム)として真摯に対応します。要求の内容が妥当でない場合でも、伝え方が相当であれば、理由を説明して丁寧にお断りし、同じ要求の繰り返しが続く場合に線引きへ進みます。
要求の内容は妥当でも、暴言・威圧・長時間・執拗といった伝え方が相当でない場合は、カスタマーハラスメントに該当する可能性があります。この場合は、要求には対応しつつ、伝え方については線引きをします。要求の内容も伝え方も範囲を超える場合は、カスタマーハラスメントに該当する可能性が高いと考えられ、社内で定めた手順に沿って報告し、対応します。
いずれの場合も、個別の言動が該当するかどうかは、目的や経緯、態様、頻度などを総合的に考慮して判断されるものです。現場の従業員が一人で判断せず、迷ったときは社内の責任者に報告してください。法的な対応が必要な場合は、必要に応じて弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
障害を理由とする配慮の求めは、カスハラには当たりません
指針は、障害のある方から労働者に対して、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)で禁止されている不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思を表明すること自体は、カスタマーハラスメントには当たらないとしています。同法に基づき、その実施に伴う負担が過重でないときは、社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮をしなければならないことに留意が必要とされています。
指針には、認知症などの症状や、病状・障害に起因する言動をカスタマーハラスメントから除く旨の記載はありません。そのため、該当するかどうかを一律に断定することはできません。このツールで作る介護・病院向けの文面では、こうした言動について、その背景に配慮し、ケアや診療・看護の一環として受け止めて対応するという事業者の方針として書いています。
また指針は、消費者法制で定められている消費者の権利や、各業法等によりサービス提供の義務等が定められている場合、サービスが途絶すると顧客等の生命や心身の健康に重大な影響が及ぶ場合等があることに留意して、適切に対応する必要があるとしています。
現場での対応の流れ
一人で抱えない、まず話を聴く、できないことは理由を添えてお伝えする、責任者に報告する、記録を残す、といった現場での対応の流れは、別のページにまとめています。
2026年10月1日から、カスハラ対策は事業主の義務になります
2026年10月1日施行の改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)により、事業主は、職場におけるカスタマーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置を講じなければなりません。企業の規模による猶予期間は設けられていません。講ずべき措置の内容は、この指針が5つの区分で定めています。
方針を伝えるポスターと、社内向けの対応マニュアルを作る
このツールでは、業種・事業者名・言語を選んで、方針をお客様等にお伝えするための掲示ポスターを登録なしで作成できます。社内向けの対応マニュアルの作成機能は、2026年10月9日に公開する予定です。
顧客等への周知は、指針が「被害の防止に当たっては効果的と考えられる」としている取組です。掲示するだけで措置義務を満たすものではありませんので、労働者への方針の周知や相談窓口の整備と併せて進めてください。
よくある質問
- カスハラとは何の略ですか。
- カスタマーハラスメントの略です。厚生労働省の指針は、職場において行われる顧客等の言動であって、業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものを「職場におけるカスタマーハラスメント」としています。
- カスハラとクレームの違いは何ですか。
- 指針は、顧客等からの苦情のすべてがカスタマーハラスメントに該当するわけではなく、客観的にみて社会通念上許容される範囲で行われたものは、いわば正当な申入れであるとしています。区別は、要求の内容が妥当かどうかと、伝え方が相当かどうかの2つの軸で考えます。個別の言動が該当するかどうかは総合的に判断されるものですので、迷うときは社内の責任者に報告してください。
- お客様が怒っていたら、カスハラになりますか。
- 怒っていること自体は基準になりません。指針は、言動の内容が契約内容からして相当性を欠くもの、または手段や態様が相当でないものを、社会通念上許容される範囲を超えた言動としています。強い口調でのご指摘であっても、内容と伝え方が社会通念上許容される範囲にあれば、正当な申入れとして真摯に対応します。
- 1回だけの言動でも該当しますか。
- 指針は、言動の頻度や継続性は考慮するとしたうえで、強い身体的または精神的苦痛を与える態様の言動の場合は、1回の言動でも就業環境を害する場合があり得るとしています。該当するかどうかは個別の状況によって判断が異なりますので、迷うときは社内の責任者に報告してください。
- 電話やメール、SNSでの言動も含まれますか。
- 含まれます。指針は、店舗や施設で対面で行われるものだけでなく、電話やSNS等のインターネット上で行われるものも含まれるとしています。長時間に渡る電話での拘束や、同様の電子メール等を執拗に繰り返し送りつけることは、手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるものの例として挙げられています。
- 取引先からの言動も対象になりますか。
- 指針にいう「顧客等」には、取引先の担当者や、企業間での契約締結に向けた交渉を行う際の担当者も含まれるとされています。また指針は、事業主が方針を示す際に、自社の労働者が他の事業主の労働者に対してカスタマーハラスメントを行ってはならない旨を併せて示すことが望ましいとしています。
- 障害のある方から配慮を求められた場合はどうなりますか。
- 障害のある方が、不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思を表明すること自体は、カスタマーハラスメントには当たりません。障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律に基づき、負担が過重でないときは、必要かつ合理的な配慮をすることが求められます。